インサート、インサートナット

インサート
インサートナット

インサート・インサートナットとは?

 挿入して利用するナットの総称なので いろいろなタイプのものがあります。
メーカー独自の呼び方、型番で流通しますが 長さは 径の何倍かを表すDを利用することが多いようです。
Ex) 2D ... 径の2倍

 主にインサートは、タップ穴を設けたい母材が弱くてメネジ側の強度が不足するような場合の強化策として利用します。また、鋳鉄、軽合金、プラスチック等強度の低い材質に対し、ステンレス転造ナット並の強度を付与し磨耗、腐食、熱、振動等による破損も防げます。その他、補修などで ダメにしてしまった雌ねじの修理などにも利用できます。

自動車や航空機、パソコン、家電等私たちの身の回りのいろいろな箇所で使用されています製品の軽量化が求められる今後、ますます需要が見込まれています。

インサートナットの主な種類

  • コイルタイプ
  • 切削タイプ
  • 拡張・圧入タイプ

1、コイルタイプ

eサート(旧ヘリサート)、スプリュー、リコイル、タングレス

 eサート(旧ヘリサート)とスプリューはインサートの商品名です。 製作しているメーカーが異なります。ヘリサートはインサート類の代名詞のようにも呼ばれています。メネジ側の強度が不足するような場合の強化策として利用します。

  鋳鉄、軽合金、プラスチック等強度の低い材質に対し、 ステンレス転造ナット並の強度を付与し摩耗、腐食、熱、振動等による破損も防げます。応力分布の分散により疲労強度も増します。補修にも利用されています ...ネジを舐めてしまった場合などにも便利です。

最近はリサイクルへの取り組みにより プラスチックと金属などの複合部品は、 簡単に分解 再生ができないので、敬遠される傾向にあります。 そのために軽合金ダイキャスト、樹脂向けタッピングねじ等の開発が進んでいますが 安全のためにインサートを利用する個所はまだ多いでしょう。

コイルタイプインサートの使い方

タップの下穴の穴あけ作業
①タップ下穴寸法に入るような適正寸法のドリルを使用し、真っ直ぐに穴をあけます
②盲穴の場合はドリル穴の最小深さSを算出して、穴あけの深さを決めます
 S=Lb+2.5P
 S=ドリル穴の最小深さ
 Lb=インサート呼び長さ
 P=ねじのピッチ
タップ立て作業
①必ずEサートタップを使用してください。タップは等径3本組です。先タップ、中タップ、上げタップがあちます。普通のタップ立てと同様に選択してご使用ください。傾いたり、芯が外れたりするとねじ山が不完全になりますのでご注意ください。穴あけ及びタップ立て作業は普通の雌ねじを作る場合と変わりありません。
②タップ穴が開いたら、Eサートインサートを挿入する前にエヤーなどで切粉を充分除去することが大切です必要に応じEサートゲージでタップ穴を検査してください
インサートの挿入作業
インサート挿入には必ずサイズに合った専用の挿入工具をご使用ください
挿入工具にはP型(プレワインダー)P2型(プレワインダー)P3型(プレワインダー)とS型(スリーブ)があります。ほかにも動力式もあります。ロックインサートの場合は、ロックインサート用挿入工具を必ずご使用ください。動力式は別途説明書をご覧ください。
①P型挿入工具の使い方
 マンドレルを引き上げてインサートをスリーブの窓へタング側を先端にして入れます。スリーブの先端にある案内雌ねじの中に、一度インサートを絞り込んでからあ、タップ穴の入り口に挿入工具を垂直にあてがい、スリーブが動かないように注意しながら、ハンドルを廻してください。インサートは案内雌ねじからタップ穴へ挿入されていきます。
②S型挿入工具の使い方
 インサートのタング側を先端にしてタングをマンドレルの溝に挟み、タップ穴に垂直に立て、スリーブでインサートに軽く押し付け、ハンドルを廻して挿入します。この際マンドレルは水平に軽く廻すか、あるいは、多少引張り上げ加減にして廻しますとインサートは正しく挿入されます。
タングの折取り作業
①サイズに合った専用のタング折取り工具をご使用ください
②タップ穴に挿入されたインサートの中にタング折取り工具を挿入し、その頭部をハンマーで強く短打すればタングはノッチから簡単に折取れます
③径の大きな(M18以ドライバーの上)インサートの場合には、ドライバーあるいは、先細ペンチを代用してタングを折り取ることもできます。ドライバーを使う場合は、ドライバーの先をタングの根元にあてがって頭部をハンマーで強く短打してください。先細ペンチを使う場合は、タングの先を挟んで雌ねじの軸方向に交互に曲げれば、ノッチの部分からタングは折り取れます。
④盲穴等でボルトがインサートのタングに当たらない場合には、タングを折取る必要はありません。
インサート抜取り作業
正しく挿入されたEサート インサートは特別の理由のない限り抜き取る必要はありませんが、ねじ込み失敗や、その他の理由で抜き取るときは次のようにしてください
①サイズに合った専用の抜き取り工具を使うとき:抜き取り工具の刃部をインサート雌ねじに強く押し付けます。その一はインサートの端末から1/4巻き位のところが普通です。抜き取り工具の刃部がインサートに喰いこみやすくするため、小型三角やすりでインサートの内側に切欠きをつければ、さらに抜き取りやすくなります。抜き取り工具は時計の反対方向に廻します。
②先細ペンチで抜き取るとき:先細ペンチでインサートの端末を挟んで引っ張りだる方法はEサート タップ穴のねじ山をつぶすことがありますので、避けてください。抜き取り工具がなく、やむを得ず先細ペンチで抜き取る場合には、インサートの端末を挟んで、ねじ込んだ方向と反対の方向に廻しながら抜き取って下さい
③抜き取ったタップ穴は再度Eサートタップを必ず通して、バリなどのないことをかくにんしてから新しいインサートを挿入してください。

インサート挿入作業例

Eサート M8×1.5Dを挿入する場合

  • 市販のドリルでΦ8.28~48の下穴をあける
  • Eサート2本組タップ(中、上セット)M8×1.25をハンドルで回してタップを切る
  • 挿入工具P型M8×125又はS型M8×1.25を使いインサートを母材に挿入する
  • タング折取り工具M8用でタングの折取りを行う

各メーカー別商品名

製造元 インサート名
㈱ツガミ Eサート
日本スプリュー㈱ スプリュー
ポップリベットファスナー㈱ ヘリコイル
リコイルジャパン リコイル
(株)アキュレイト タングレスインサート

ヘリサート ㈱三友精機 池田金属工業

POINT コイルタイプインサートナットのQ&A

コイルタイプナットの呼称長さとは?

呼称長さは、呼び径の1倍、1.5倍、2倍とし、それぞれ1D、1.5D、2Dと表記します。
(例)M10-1.5×1Dの場合  呼び径M10なので長さは10ミリ
ただしこの場合の長さは、圧入して使用するときの長さで、自然長さではありません

 

サイズを知るには?

手元の商品の自由外径と、自由巻き数を調べてメーカーのサイズ表と照合してください。(巻き数はノッチの下から1巻き目となります)

2、切削タイプ

エンザート 


 ヘリサート、スプリューと用途は同じですが、自力切削式なので下穴が有れば専用工具なしで、直接ねじ込みます。 タップ作業が不要で、切粉も少量です。

  樹脂(FRP等)、金属(軽金属、鋳鉄等)母材の下穴に対して スムースに挿入できます。

  西ドイツ ケーブコーンズ製造KKVコーポレーション製

3、拡張・圧入タイプ

ビットインサート

圧入タイプ
もっとも一般的でコストも安価

ウルトラインサート

熱溶剤タイプ
熱で溶かしながら挿入するので、高い強度を得られます。

ダッヂインサート

拡張タイプ
薄い肉厚の相手材にも使用可能
  

 

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