ねじのねじ山の種類

●ねじ山にも種類があります。

・円筒上にねじのある平行ねじ(ボルトなど)

・円錐にねじのあるテーパーねじ(プラグなど)


ねじ山自体の形も

・三角ねじ

・四角ねじ

・台形ねじ

・のこばねじ

・丸ねじ 

などがあります。
締結向けに利用される一般のねじには三角ねじ、送りに利用する場合は台形ねじが利用されています。
丸ねじは電球のソケットのねじ山です。

●ねじの向きにも種類があります。

 ●右ねじ

ナット(雌ねじ)を固定し、ボルト(雄ねじ)を右まわり(時計まわり)に回したときに、ねじ込まれていくねじを右ねじと言いますが、一般に利用される多くのねじは右ねじなので、特に右を付けて呼んでいません。

左ねじは逆に、左まわしで締まり、右まわしするとゆるんで外れてしまいます。ほとんど利用されていませんが常に回転するような場所で、いつも左まわしの力を受けるような場所やメンテナンス上必要な箇所、その他の理由で利用されています。軸を左右で固定する場合の片側や自転車の左ペダルをクランクに固定する場所のねじは左ねじになっています。

 ●左ねじ

左ねじ(Left-Hand Thread)は、左または逆、LHと表記して一般の右ねじと区別し ています。
ねじを立てて見てねじ山が左上がりになっているのが、左ねじです。

 ★右ねじと左ねじを同時にもつものも!!

ゆるみ止めボルトとして、ねじ山を2条として右ねじと左ねじを同時に持つボルトもあります。
右ねじと左ねじナットのダブルで固定するわけですが、これだと振動などで緩める方向にナットが動こうとすると左ねじのナットは反対に動こうとするので緩まないわけです。
 

●ねじのねじ山の規格

さて、ボルト(雄ねじ)とナット(雌ねじ)は同じサイズ同士になっていないと当然噛み合いませんが、同じサイズでも【ねじ山の形や角度、大きさ、並ぶ間隔】が同じになっていないとねじ込むことができません。
日本にも工業規格(JIS)があって、標準に準じてねじ作りをしています。
もちろん国際規格(ISO)にも準じています。

先端が尖っている木ねじなどは相手の木材にねじ込んで行けばよいので雌ねじとの相性は関係ありませんが、工業製品として統一性がないと利用できないので、やはり規格化されて生産されています。
現在、全世界ですべての工業製品がISO規格通りになって一本化されていれば話は簡単なのですがそれぞれの国で特異な事情や歴史があり、一時期に世界共通とはならないようです。
日本でも、古い規格が習慣的に残っていて 完全に移行しているわけではないので注意が必要です。


★ISOでは基本的にメートル系の単位を採用していますが、ISOにもメートル系とインチ系があります。

日本 メートル系
ヨーロッパ メートル系が多い
アメリカ 軍事向けにインチ系を使ってきた経緯があり、一般産業にもインチ系を利用することが多い
航空機なども戦勝国のアメリカが優位性を持ち利用されるねじはインチ系が多くなっています。

 

●ねじには締結(締め付)用に利用されるボルト、ナットなどの他にも

  • 1.運動や動力伝達用(ジャッキ、プレス、XYテーブル、工作機械送り、材料送り等)
  • 2.気密用(ガス管、油圧管接続等)
  • 3.精密測定用(マイクロメーター等)


などの用途があります。締結向けに利用される一般のねじには三角ねじ、送りに利用する場合は台形ねじが利用されています。


●ねじ山を加工する方法としては、

  • 1.タップ、ダイスによる方法
  • 2.旋盤による切削加工
  • 3.フライス盤により切削加工
  • 4.研磨による方法
  • 5.転造による方法


などがあります。

締結向けねじ部品全体の製作としては、冷間圧造(ヘッダー)よってねじの形のリベットを形作り
転造加工でねじ山を作る方法が大半です。
特殊な形状のねじ等は切削加工で製作することも多いですが、近年の冷間圧造技術の発展に伴い
大きなものから小さいもの、複雑な形状のものまで冷間圧造と転造で作られています。
昔の小ねじはマイナスドライバーで締め付けをしていましたが、現在はプラス(十字穴)が主流です。

マイナスよりプラスの方が締め付け作業がはるかに楽で安全です。
このプラス穴は冷間圧造では簡単に作りこめますが、切削加工では作らないものです。
また、冷間圧造と転造によるねじの量産により大幅なコストダウンを実現しています。
この他にも素材を溶かして型に流し込んで作る方法で作られるねじもあります。

 


●リード(Read)とピッチ(Pitch)

ねじの規格書などを見ているとリード(Read)とピッチ(Pitch)という言葉が出てくると思います。
一本のねじ山が円柱に巻きついたものを一条ねじ(Single threaded screw)といいます。
そして、一回転して軸方向へ進んだ長さをピッチ(Pitch)と呼んでいます。
【締結用のねじの多くは一条ねじ】です。

★ドリルビスや特殊タッピング、特殊ビスには多条ねじが利用されることがあります。
 

 ★2条ねじ

2001年に右ねじと左ねじを持つ2条ねじが量産可能になりました。ゆるみ防止に効果があります。
2本のねじ山が円柱に巻きついたものを二条ねじといいます。
これが3本やそれ以上の場合もあります。(多条ねじ(Maltiple Thread))
そして二条の場合ピッチ(Pitch)x2=リード(Read)になります。
多条ならピッチxnがリードになります。
多条なほどリードが大きくなりますので、少ない締め付け回転で早く締結が完了します。
大砲の尾栓などにも多条ねじが利用されています。
リード角とねじれ角は違いますので注意してください。90-リード角=ねじれ角
またねじはピッチの小さいほう(リード角小さい)がくさび効果により同じ力で締めても強く締め付けられます。
逆にリード角が大きいとゆるんで使い物にならなくなります。摩擦角>リード角
メートル並目ねじではリード角は2-3度程度 摩擦係数を0.1と小さく見ても摩擦角は6度となります。
実際、ボルトを締め付けるとボルトは伸び、品物は縮み、ねじ山はたわみこれらの力の働きが
つりあって固定していることになります。

●メートルねじ

メートルねじは基準の山形、各部の基準寸法がJISで決められています。

並目ならば呼径でピッチ、有効径、ひっかかり率、谷の径がわかります。
雄ねじと雌ねじをはめあわせたときにねじ山の斜めの面(フランク)で互いに接しています。
実際に接触している場所はねじ山の幅とねじ溝(谷)の幅の等しい有効径を中心とした範囲です。
この接触している範囲(ひっかかり高さ)が基準山形に比べてどのくらいの率になっているかを
百分率であらわすのがひっかかり率になります。普通は70-80%です。
隙間がないと軽く動かすことが出来ませんし、誤差もありますので許容範囲が定められているのです。

雄ねじと雌ねじがはまり合っている部分(軸線方向)の長さをハメアイ長さと呼んでいます。
ボルトとナットの最小ハメアイ長さは0.6x呼び(材質同じ場合)と計算されるようですが
JISでは0.8-1.5x呼び になっているようです。
ボルトとナットで締め付けたときに、ナットのねじ山にかかる力は均一ではありません。
実際には座面に近い1-2山に多くの力がかかります。

雄ねじと雌ねじはペアで利用しますが、軽く動かすためには軸方向に隙間が必要です。
しかし、この隙間のために隙間に相当する分だけの回転角が死んでしまい
回転角とリードは正比例しなくなります(バッククラッシュ)ので、送りねじなどでは考慮が必要になります。
マイクロメーターに利用するねじは、この隙間が極力少ない精密なつくりにしないと正確に測れなくなってしまいます。

ボールねじは、ねじというよりベアリングを合わせたような組み立て品です。
雄ねじのねじ溝と雌ねじの溝を対抗させて出来る螺旋の空間に転がり軸受け用の玉(ベアリング)
を一列に入れたもので、一端から出た玉はチューブを通って再び他端の溝に戻されます。
普通のねじに比べて摩擦係数が0.005以下ときわめて小さくバッククラッシュのない送りねじになります

ねじの基本知識